ユーロを占うESMの実効性

上半期の主要テーマは「ESMの実効性」

2012年上半期は「ESM(欧州安定メカニズム)の実効注」が主要テーマだろう。既存の欧州金融安定基金(EFSF)とESMを並行稼動させることで、格下げによりEFSFが機能不全に陥り、セーフティネットが瓦解する事態は回避できるようになった。

 

だが、「ESMとEFSFを合算して上限5000億ユーロ」という現状の規模で市場を納得させることは難しそうである。この点、3月のEU首脳会議で引き上げが検討される予定だが(市場の催促に応じ、おそらくこれは1〜2月に前倒し協議となろう。

 

すでにメルケル独首相の反意が報じられるなど、2012年も支援額の過不足をめぐってドイツとそれ以外の国の間でおなじみの光景」が繰り広げられそうである。また、金額以前にESM設立にかかるリスボン条約改正について7月までに全加盟国の批准を得ることができるのかという不安もある。

 

意思決定に関し盛り込まれた多数決ルールにフィンランドが難色を示すなど、簡単に批准されるとは思えない。各種スキームをめぐっては重い宿題が待ち受けており、特に上半期中の決着をコミットしているESMへの注目度は高い。

欧州銀行の増資も上半期まで

さらに欧州銀行監督機構(EBA)は欧州銀行に対し、「狭義の中核的自己資本比率9% 以上」という厳しめの基準を6月までに実現することを求めている。これを受けて多くの欧州銀行が資産圧縮を求められるが、それだけで基準を満たせない銀行は自力増資が求められるし、自力が無理ならば自国政府またはEFSF/ESMからの公的資金注入ということになる。

 

すべての銀行が自力で資本調達できれば問題ないが、それが無理な銀行は公的資金に依存するより他ない。

 

仮にEFSF/ESMの原資を使用するのであれば、結局は上述の金額過不足問題が頭をもたげる恐れがあって、市場不安は掻き立てられる。ギリシヤの債務を巡るPSI(民間債権者負担)も実現に向けて動き出すことを考えれば、自己資本比率引き上げを念頭に入れた、欧州銀行やのデレバレッジは上半期に本格化する恐れがある。

2012年の為替相場

これらに加え、2012年1〜4月にはイダリアやギリシヤで国債償還が集中し、特に2月に総選挙を迎えるギリシヤでは債務再編への不安が再燃しそうである。この際、ユーロ相場はかなり不安定になろう。以上のようにユーロ圏は上半期に重く、重要な宿題をたくさん背負う。これらの宿題を遅滞なく処理できれば、下半期の市場の関心は欧州債務問題からFRBの金融政策に移るだろう。

 

FRBの利上げは「2013年半ば」はもちろん、2014年に入る頃にも実現していない可能性が高く、2012年は引き続き追加緩和を模索する局面だろう。米金利の先安観が定着し、欧州債務問題への不安が後退するならば、為替相場は2011年上半期と同様、ドルキャリー取引を背景とした金融相場にシフトすることが予想される。

 

その際、ユーロも円もドルに対して上昇し、株式相場も騰勢を強める可能性がある。こうした状況では商品価格の上昇といった負の作用も伴うが、結局この程度の相場つきが2012年のベストシナリオなのだろう。

 

だが過去2年間のEU当局の立ち回りを見る限り、上半期の宿題が完璧に片付き、下半期をリスクオンムードで迎えられる可能性はどちらかと言えば低いと考えておきたい。 

 

2012年も毎月のようにEU首脳や財務相による会合が開かれ、新しいスキームが出ては修正され、ユーロ相場もこれに振らされるという「いつか来た道」をたどる公算が大きい。 

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