ドル円膠着が終わるシナリオ

ドル円の膠着が終わるシナリオ

足元ではドル/円の膠着が続く一方、ユーロは悪材料を抱えボラテイリテイの大きさが目立つが、実は対ドルでそれほど明確な下降トレントを形成しているわけではない。本稿ではこれらの理由について解説し、今後の相場展開について考察する。

 

まずドル/円の膠着理由を考える。日米とも金融政策では量的緩和を採用し、ドルも円も流動性は極めて潤沢な状態にあり、かつ日米の金融システムは欧州に比べ懸念が少ない。このためFX投資家のリスク回避姿勢が強まると流動性確保のためドルと円は買われやすくなる。

 

そしてこのようなリスク回避マネーが向かう先は、日米の短期国債である。周知の通り、ドルも円も超低金利であり、一般に短期国債から大きなリターンを期待することは難しい。このため世界的に景気が上向き、投資家のリスク選好姿勢が強まった場合、投資マネーはより高いリターンを求める動きに転じるため、超低金利のドルと円は売られやすくなる。

 

このように、リスク回避でもリスク選好でもドルと円は同じ方向に動くため、その結果ドル/円は膠着してしまうのである。それでは、この膠着が終わりを迎えるのはどのような場合なのか。筆者は米国における金融政策の次の一手がドル/円の方向性を決める重要な要素とみている。世界の為替取引の約85%はドルが相対通貨であることを考えれば、ドル円の動きはドルに左右される部分が多く、そのドルは米国の金融政策に大きな影響を受ける。

 

米国で量的緩和第3弾(QE3)が実施されるとの見方が浮上し、米国の長期金利がここから一段と低下した場合、ドル/円は再び76円方向に向かい、一時的に大きくドル安円高が進行する可能性もあろう。現段階でQE3の実施を正当化することは困難だが、米国の経済活動が大幅に落ち込んだ場合や、欧州債務危機の波及リスクが増大した場合には、米連邦準備理事会(FRB)は新たな緩和策を打ち出すものと思われる。

 

一方、米国の経済成長が加速し、失業率が急速に低下した場合、米国の長期金利は上昇し、FRBによる出口戦略再開の思惑も強まろう。その際、ドル円は80円方向に向かってドル高円安が進行すると思われるが、2012年にこのような動きが顕著になる可能性は低そうだ。

 

シティでは、米国が利上げに転じる時期は2014年とみている。したがってドル円相場を展望した場合、米国の金融政策に大きな変更が予想されない限り、現行水準で膠着する期間が長期にわたる公算が大きい。

ECBの金融敢策に注目

次にユーロを考察する。ユーロドルはドル/円と異なりボラティリティがきい。しかしながら過去3年ほど、おおむね1ユーロ=1.20ドル〜1.50ドルのレンジで推移し、明確なトレントは形成されていない。米国とユーロ圈の金融政策を比較した場合、FRBは積極的な量的緩和を行ってきたのに対し、欧州中央銀行(ECB)は国債購入に伴って市中に出回る資金を吸収するなど量的緩和とは一線を画している。この差は金利変動を通じユーロ高ドル安要因として作用しやすい。

 

その一方、欧州債務危機を嫌気したユーロ売りやリスク回避のドル買いで相場はユーロ安ドル高に動く。これがユーロドルのボラティリティを押し上げ、結果的に数年にわたってレンジ相場が形成されている背景である。ユーロドル相場を展望した場合、とりわけECBの金融政策には注意が必要である。ユーロ圈の景気後退が予想されるなか、ECBは2011年11月から利下げに踏み切っており、12月には期間3年の資金4890億ユーロを銀行向けに供給した。

 

ここから一段の緩和措置も見込まれ、政策金利は2012年4−6月期に年0.5%へ引き下げられるとみている。このためユーロドルはこの先、1ユ一口=1.20ドル〜1.25ドルのレンジに低下する可能性があり、その際ドル/円の膠着が続けば、ユーロ円はユーロドルの下げにつれ1ユーロ= 95円を大きく割り込むこととなろう。シティのメインシナリオではないが、ユーロ圈がデフレに陥り、ECBが量的緩和に踏み切れば、ユーロの減価圧力は増大すると思われる。したがって、今後のユーロ相場を見る上ではECBの金融政策スタンスにも注目しておきたい。

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